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警戒心薄れたエイズ感染

 厚生労働省が2月末、速報値として発表した統計によると、2012年に新たに報告されたエイズウイルス(HIV)感染者は1001人、発症してから感染を知った新規エイズ患者数は445人だった。前年と比べ、感染者は55人、新規患者は28人減っている。感染者は2 年連続の減少だから、統計的にはわが国のエイズ感染は改善しているように見えるが、厚労省は「実態は横ばい状態」という。

 背景には、エイズに対する警戒感が薄れたことがある。投薬治療で発症をほぼ抑えられるようになったことで、かつて「死に至る病」と恐れられたエイズは今、〝普通の慢性病〟ほどの関心しかなくなっているのだ。

 あれほど感染予防を叫んでいたメディアも、エイズ問題を取り上げる回数は激減。加えて、学校教育では感染者への差別をなくす目的もあって、「エイズは決して恐ろしい病気ではなく、感染症の一つ」と教えるようになっている。

 医療の進歩によって、エイズ予防への関心が低下したのは皮肉としか言いようがない。検査や相談件数が減った分、感染に気づかずに不特定多数との性行為を繰り返して感染を拡大させる危険性が高まる。このため、わが国のエイズ感染は、厚労省が言うように「横ばい状態」どころか、むしろ潜在化が進み悪化している可能性もある。

 国連合同エイズ計画のグローバルファクトシートによると、2011年現在、全世界のエイズ感染者は3400万人。同年1年間だけでも、170万人が死亡した。世界で最初の症例が報告されたのは1981年。この間、同性愛や不特定多数との性交渉など、人類が無軌道な性行動を改めていれば、エイズによる犠牲者がこれほどまでに増えることはなかったはず。

 わが国においては、1985年に初めて患者が確認されてから、昨年で感染者は2万人を超えた。投薬で死に至る危険性は少なくなったとは言え、エイズ感染によってリスクの高い人生を強いられることに変わりはない。エイズを撲滅する唯一の道は、性道徳の回復なのである。

グラフ

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