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出生前診断の拡大に歯止めを

 妊婦の採血だけでダウン症など、胎児の染色体異常があるかどうかが分かる新型の出生前診断の導入問題が論議を巻き起こしています。日本産科婦人科学会は12月中にも、検査前後のカウンセリング体制など実施にあたっての指針を公表する予定ですが、医療技術の進歩によって、妊娠の早い段階で胎児の異常が分かるようになれば、それが中絶という名の「生命の選別」につながることが懸念されます。医療技術の一人歩きにどう歯止めをかけるかが大きな課題となっています。

 日本産婦人科医会によると、胎児の異常を理由にした中絶は、1985〜89年は約800件でしたが、95〜99年は約3千件、05〜09年は約6千件と急増しています。高齢出産が増加したことに加えて、出生前診断の精度が上がったことが原因と考えられます。

 出生前診断でもっとも大きな問題点はその目的です。胎児の異常を早期に発見することは治療につながるとの意見がありますが、たとえばダウン症には根本的な治療法がないのですから、診断の目的は事実上、「正常」と「異常」の選別ということになります。

 生命を選別することの恐ろしさは、説明するまでもないでしょう。家族愛や隣人愛は生命の尊厳を前提に成り立つものです。生命は人知を超えたものだからこそ、存在そのものに価値があるのです。

 新型出生前診断は、生命の尊厳を崩しかねない生命の選別につながる危険性が高い医療技術です。その導入にあたっては、医学界だけでなく法律家や宗教家などの幅広い見識を踏まえて、診断を受けられる対象条件を限定する必要があります。と同時に、医療技術の進歩は、生命の尊厳とは何か、という人間の本質に関わるテーマについて、社会的なコンセンサスの構築を迫っているのです。

グラフ

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