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情報室

貞操感損なう子宮頸がんワクチン

ジャーナリスト 安地善太

「セックスデビュー」の言葉乱用

 4月上旬、NHK総合テレビの朝の番組で、性関係を持つ前に子宮頸がんワクチンを接種するよう声高に訴えていた。子宮頸がんワクチンを打ったからといって、子宮頸がん発症の原因とされるウイルスから完全に守られるわけではない。現在導入されているワクチンは、6割足らずの確率だが、番組では6〜7割の確率で予防できると高めに解説していた。
 その問題もさることながら、もっと重大なことは、NHKが「セックスデビュー」という言葉を安易に流し、若い女子中高生に、性関係を持つのが当たり前のようなメッセージを与えたことである。番組のスタジオでも、その問題については、一切議論が無かったのには疑問が残る。

 さて、この番組は、生活情報を伝える視聴率の高い「あさイチ」。少し番組内容を振り返ってみたい。前半では、子宮頸がんワクチンが不足しているという事実を報じる一方で、女子生徒の接種率が低い地方自治体がある、という点にスポットをあてていた。
 取材対象となったのは、熊本県上天草市。同市ではワクチン接種の対象となる中1から高1までの女子生徒798人のうち、接種を受けたのは35人(2月末現在)だけという。
 同市でクリニックを営む島田康医師は「ワクチンでがんが防げると話題となっていたので、たくさん受けに来ると思っていたら、意外と皆、様子を見ている」と納得のいかぬ表情。
 番組は、ワクチン接種が進まない原因を費用に帰そうとしていた。ワクチンの費用は半分国が賄うが、残りは自治体の負担となる。
 同市では、厳しい財政事情の中、9歳まで医療費を無料にする政策を実施してきたため、子宮頸がんワクチンを無料にすることができず、個人負担を3割と決めたと解説。半年以内に3回接種する必要があり、合計50,000円するので3割負担となると15,000円となる。1回につき5,000円だ。
 取材に当たった内藤裕子キャスターが、長女、長男、次女の3人の子供を持つ市内のある家庭を訪問。母親は、長女が大学に行っていて仕送り額が大きく、長男も部活に費用がかかり、教育費は月に15万円。このため、予防接種を受ける年齢幅が比較的長いので、「5,000円ができてから受けさせるかな」との弁。説明する母親の口調からは、娘を見守る暖かな雰囲気が感じられた。
 次女は「がんがワクチンで予防できるとしたら、ワクチンを受けたいと思いますか」と問われると、「あまり自分の近くで聞いたりしないし、多分、自分は大丈夫だと思うので、あまり(受けたいとは)思わない」と答えていた。
 島田医師は、ワクチン接種が進まない理由に、親が性について語りたがらない点を指摘。番組は、風邪で診察に来た別の母子にワクチン接種を勧めるシーンも。同医師が「ウイルスが入る前にする」というと、その母親は「入るといっても、あまり子供の前では言いにくい。まだちょっと早い感じがする」と述べていた。
 インタビューで、島田医師は「セックスデビューの話だが、『うちの子に限っては』ということで話したがらないお母さんがいる。そうではない」と説明しながらも、「何を持って(接種率を高めるように)したらよいか、手詰まり感がある」と語っていた。
 この取材ビデオをもとに、スタジオのレギュラーとその日のゲストが様々に議論を展開したが、当たり障りの無いものばかり。内藤キャスターはタイミングを見て、島田医師の「性の問題に敏感になる前に、接種をしたほうがよい」とのコメントを紹介した。
 スタジオの斎藤明彦氏(小児科医)は「接種は、セックスデビューの前に、早ければ早いほどよい大事なワクチン」と説明。ただ「その時に、しっかりと説明をしておかないと、後でワクチンに対する誤解が生まれたりしかねない」と補足。生じかねない誤解については、それ以上に何の説明もなく、司会も問わなかった。

 だが、「性に敏感になる前に——」という見解は、的を射ているのだろうか。性教育を、子供が性のことを恥ずかしがるようになる前に行ってしまおうという過激な性教育と同じ発想だ。ワクチン接種最低年齢の10歳くらいになると、女子は第二次性徴が現れはじめ、すでに性に敏感である。そうした体の変化があるからこそ、ワクチンも効果が出てくるといえる。
 問題は、結婚前に性関係を結ぶことの是非を、親がどう教え、また子供がどう捉えるかという点である。結婚前の性交渉は控えるという観念を持った子供にとり、このワクチンの接種は「お仕着せ」となる。予防効果があるから受けた方がよい、という言葉は、一見、もっともらしいセリフだが、女子の貴重な貞操観念を汚すことになってしまう。
 上天草市の女子中学生も、「自分は大丈夫と思う」と語った言葉の背後には、そのような気持ちがあったに違いない。母親も、娘の純潔の大切さを思っているからこそ、ワクチン接種の優先順位は極めて低い。費用というのは方便といってもよいだろう。
 ましてや、ワクチンの効果は限定的である。子宮頸がんの原因となるHPV(ヒト・パピローマ・ウイルス)は15種類もあるが、導入されているワクチンで防げるのは2種類だけだ。定期検診の方が、はるかに予防効果がある。
 さらに、女子中高生の性体験率の上昇により、HPV感染から、がん発症まで約10年であるため、子宮頸がんの発症年齢が若くなり、30代の女性が最も多くなりつつある。

 対馬ルリ子医師(ウイミンズ・ウェルネス銀座クリニック)も「性交開始年齢が早くなっていて、高校3年生で4、5割の女子生徒が性交を開始していますから、20代の子宮頸がんは10年前の5、6倍に増えていると思います」(毎日新聞、2010年2月10日付)と述べている。彼女は、子宮頸がんワクチンの普及に熱心に取り組む立場だ。
 加えて、女性の晩婚化が進み、35歳以降の高齢出産が増加。このため、結婚して出産する前にがんを発症するケースが増える。治療で子宮摘出となるため、結婚しても出産は望めない。勢い、少子高齢化に一層、拍車をかけることになる。
 同番組の後半部分では、29歳で子宮頸がんを発症した女性を紹介。既婚だったが、子宮、卵巣を摘出し、子供は一人だけ。治療後も後遺症に苦しんでおり、ワクチン接種の必要性を全面に出した。だが、言うまでもなく、結婚前の性交渉を慎み、結婚後、不倫などしなければ、HPVに感染せず子宮頸がんに苦しむこともないのである。

 東日本大震災で、電力など必要なものをいくらでも供給し、安楽さを最優先とする価値観の見直しが起きている。こういう状況下で、マスコミも医師も、子供にとり必要のない性交渉を、なぜ「セックスデビュー」という評価するような言葉で後押ししなければならないのか。
 子宮頸がんワクチン接種に固執し、その影響で一層の少子高齢化を招けば、木を見て森を見ない愚策となる。定期検診の方が、はるかにがん予防の効果があるが、わが国では低い率に止まっている。数百億円に上るワクチン接種の全額支援策を直ちに中止し、定期検診にこそ支援を行うべきである

グラフ

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