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家庭と教育をどう再建するか〜米国からの提言

写真1

元米国厚生省事務次官補
パトリック・ F ・フェイガン(Patrick F.Fagan )

アイルランド生まれ。アイルランドのダブリン大学で社会学を学び、小学校で2年間教鞭を執った後、同大学で心理学修士号および臨床資格を取得。1984年から米国で家庭、結婚、子供を保護する公共政策分野に携わり、自由議会財団の児童家族研究所所長を務め、1988年から自由議会財団の社会政策担当上級副会長、1989年からブッシュ政権下の米国厚生省家庭・地域社会政策担当事務次官補を歴任。現在、ヘリテージ財団の家庭・文化問題を担当するウィリアム・フィッツジェラルド上級特別研究員。

  • パトリック・F・フェイガン氏の主な著書フェイガン氏の主な著書(ヘリテージ財団発行ヘリテージ財団発行)
  • 「暴力犯罪の根本原因:結婚、家族、地域社会の崩壊」1995年
  • 「アメリカの社会崩壊」1996年
  • 「児童虐待の危機:結婚、家族、アメリカ共同社会の崩壊」1997年
  • 「家族の崩壊:子供とアメリカ社会への影響」1998年
  • 「家庭崩壊がいかに子供から将来の幸福を奪うか」1999年

先進国を蝕む現代病

 私たちがアメリカで学び取った「家庭に与える影響」に関する教訓をこれから紹介します。これらの内容はアメリカにおける全国規模の社会学的調査に基づいています。これを通して皆様は、アメリカの優れた点と劣っている点について理解することができるでしょう。
 アメリカという国が「家庭」に対する考え方を見直すために、私は同僚と共に努力しています。皆様の家庭生活に干渉するつもりはありませんが、もしここに参考になる教訓があれば、是非、取り入れてみて下さい。私たち人間には真底において共通の性質があると思います。文化によって家庭生活の営み方は多少異なりますが、その基礎となる部分は全く同じと言えるでしょう。
 私はアメリカにおける家庭の状況をお話しようと思います。それを通して、皆様がわが国、アメリカの失敗から何らかの教訓を学び、またアメリカに強さをもたらしている領域からも、何らかの教訓を学ぶことができればと思います。
 私は、凶悪犯罪の増加、学級崩壊、そして援助交際など、日本で持ち上がりつつある社会問題のいくつかについて、聞いたり読んだりしてきました。
 これらはすべて、機能不全に陥った極度の個人主義、「責任」に対する「本能的衝動」の勝利、「長期的な善」に対する「刹那的な喜び」の勝利が外に表われたものと説明することができるでしょう。
 これらの問題は、程度の差こそあれすべての先進国をさいなんでいる現代病の現れである、と私は見たいと思います。日本は強力な社会的結合性と深い同質の文化が社会生活と国民生活のすべての面に浸透している国でありますが、その文化的防御をもってしてもなお、こうした影響をすべて食い止めるのに十分ではないことが明らかになっています。すなわち、日本が「同じ川の水を飲む」限り、いくつかの同じ反応を示すでしょうし、それはその独自の文化のゆえに変化はあるとしても、ほぼ同じ方向へ向かうでしょう。違った言い方をすれば、日本人もアメリカ人やヨーロッパ人と同じように人間だということです。

アメリカで増加する崩壊家庭

 アメリカ合衆国は、非常に他とは異なった国であり、多様な文化を持っています。それは一つの民族ではなく、地球上のあらゆる所から集まった人種が交じり合ったものであり、常に変化し続けています。その結果として、アメリカには社会的結合性においてより乏しく、その社会指数は常に外部の人々を驚かせてきました。つまり、殺人、強盗、離婚、婚外出産の割合は、最近顕著となった家庭崩壊の数十年前でさえも、常に他のほとんどの国より高かったのです。
 アメリカの「強さ」は、個人の自由と大きな経済的自由を保証する政治制度によるものです。アメリカは、人々が引き継いでいた文化的伝統よりも、むしろその政治の文化によって規定される国です。同時に、そのヨーロッパ的なルーツの故にアメリカはユダヤ・キリスト教的な西洋文明の一部を成しており、その伝統はロンドン、パリ、ベルリン、ダブリンを経て、アテネ、ローマ、そしてエルサレムへとさかのぼるものです。
 しかしながら、アメリカとヨーロッパは、日本と同様に偉大な経済的繁栄を経験しつつも、それぞれが違った形で既に社会的結合性の衰退を経験しています。
 アメリカ社会の変化を理解するためには、その根底にあるもの、すなわちアメリカの子供たちが成長過程で体験することを把握する必要があります。ますます多くの子供たちが、結婚しない両親や、あるいは結婚はしたが子供たちの成長の過程で離婚した両親のもとで成長するようになっています。
 こうした子供たちは、両親がお互いを拒絶し合ったり、同居していながらも愛憎相半ばしているような状況を経験するのです。 1950年には、崩壊した家庭に生まれる子供たちは100人中12人でした。4人が私生児として、8人は親が離婚していたケースでした。そして確実に増加を続け、1993年までには、100人の子供のうち、60人近くが壊れた家庭に生まれるようになっていました。そのうち33人が私生児であり、25人が両親の離婚によるものでした(図1)。
 図2は家庭内の疎外の状況であり、とりわけ夫婦関係、および実の両親間の不和を表しています。今日のアメリカでは、初婚の両親と生活している子供はわずか47%です。残りは、「未亡人」家庭を除いてすべて、両親が拒絶し合う崩壊家庭に住んでいます。この図の中に「再婚」とありますが、この場合壊れてしまった最初の結婚があるのです。割合で見ると、「離婚または別居した片親」、「同棲」、「独身」と続きます。

図1

図2

結婚の破綻が子供の成長に与える影響

結婚の破綻が子供の成長に与える影響はとても大きいものがあります。※1
それらの影響の主なものを挙げると次のようになります(図3)。

図3

  • 新生児の健康状態が悪化し、幼児の死亡率が高くなる。
  • 知能、とりわけ言語能力の発達が遅れる。
  • 学校の成績が低下する。
  • 仕事を達成する能力が低下する。
  • 行動上の問題が増加する。
  • 衝動を抑える力が低下する。
  • 社会性の発達が歪められる。
  • 福祉への依存度が高くなる。今日、福祉に依存している子供の約92%は崩壊した家庭の出身である。※2
  • 地域社会における犯罪が増加する。
  • 肉体的または性的な虐待を受ける危険が増大する。※3

結婚の破綻が成人に及ぼす影響※4

 大人といえども、自分自身の結婚の拒絶あるいは解消の影響を免れるわけではありません。その影響をいくつか挙げます。

  • 平均余命の短縮※5
    タバコを吸わない離婚男性の死亡率は、1日に少なくとも2箱のタバコを吸う男性の死亡率とほぼ同じです。女性の場合は1箱となります。全般的に、離婚した白人男性が早死にする割合は、結婚している場合の4倍も高くなっています。※6
  • 肉体的健康の悪化
  • 精神的健康の悪化
  • 経済的状況の低下

 婚外出産の割合は、1950年から明らかに上昇しています。近年、それは33%で横ばい状態にあります。1994年に33%で最高値に達した後は、毎年同じレベルにとどまっています(図4)。ですから、最近アメリカで良い変化が出てきているのです。特にその変化はティーンエージャーの間で起こっています。アメリカで良い変化をもたらしているのはティーンエージャーです。

図4

 多くのアメリカ人が18歳、19歳で結婚していた時期がありました。結婚しているティーンエージャーに生まれた子供の数は継続して減少し、未婚のティーンエージャーに生まれた子供は劇的に増加しました。1982年頃にその率は50%対50%になりました。未婚のティーンエージャーの子供はそれ以降も増加を続けました。ティーンエージャーが生む子供の数はそれほど変わっていませんが、結婚しない状況で出産する数が大きく変化したのです(図5)。

図5

 同時に、1966年から、アメリカでは結婚している女性の出生率が低下してきました。昔にさかのぼるほど高くなっています。1970年代には大きく減少し、その後は少しずつ減少しています(図6)。最近はわずかですが上昇しました。

図6

 出生率は世界の至るところで減少しています(図7)。ある国家が同じ人口を保つためには、女性は平均して2.1人の子供を産む必要があるというデータがあります。イタリアの出生率は1996年に世界で最も低く、1.24でした。日本は1.48です。最も最近の数字では、スペインが1.15で最低となっています。全ての先進国で出生率が人口補充水準を下回っています。

図7

 結婚による出生率は急速に低下し、婚外の出生率は急速に増加しています。図8が示す通り、すべての年齢層で未婚女性の出産数は上昇しています。ただし10歳代後半では、最近1〜2年減少しているのが分かります。また10歳代半ばもわずかに減少しています。

図8

 図9は母親の年齢層別に見た婚外出産の割合です。もし皆様がアメリカについてご存知なら、ティーンエージャーの婚外出産について多くのことを聞かれたでしょう。しかしティーンエージャーは、割合で見ると小さな集団です。中でも若いティーンエージャーはさらに小さな集団で、14%です。すべてのティーンエージャーを合わせても31%です。ほとんどの婚外出産はより年齢の高い女性の間で起こっています。

図9

 図10は2番目の婚外出産についてです。これは特に公共の役職についている方にとって重要なデータです。なぜなら2番目の婚外出産は、母親に貧困生活を決定付ける傾向があるからです。一人の子供でもそうですが、二人だと確実に、しかも長期にわたって影響します。そしてアメリカではこのような婚外出産のほとんどは、より年齢の高い女性によるもので、20歳代とそれ以上の年齢層です。ティーンエージャーは極めて少数です(図10)。

図10

離婚が引き起こすリスク

 それでは次に離婚について見てみましょう。離婚の影響を受けた子供の実際の人数ですが、1950年には25万人が両親の離婚を経験しました。そして1970年代に急激に上昇し、1980年代初期に頂点に達しました。一番多い年には1年間で120万人です。それ以降は少し減少してきました。現在は約110万人です(図11)。

図11

 それでは、離婚が子供に与える影響を見てみましょう。私は現在、論文を書いています。もし皆様がこの分野に興味をお持ちならば、間もなくインターネット上に掲載されます。「家庭崩壊がいかに子供から将来の幸福を奪うか(How Broken Families Rob Children of Their Chances for Future Prosperity)」という題名です。離婚は日本でも増加し始めており、ますます日本社会の重荷となるでしょう。子供たちにとって、両親の離婚は次のようなリスクを増加させます。

  • 両親に対する愛情が減退し、後に結婚に対して好悪相半ばする感情を持つようになり、結婚する前に同棲する可能性が高くなる。
  • 友人や将来の配偶者との間に生じる葛藤を処理する能力に欠ける場合が多く、その結果、離婚の可能性が高くなる。女子の間では一層この傾向が強くなる。
  • 子供が10代の時に両親の離婚が起こった場合には、簡単にフリーセックスに陥りやすくなる。10代の少女の妊娠が増加し、10代の少年は怒りにまかせて暴力を振るうようになる。
  • 仲間たちとうまくいかなくなり、社会的不安や拒絶される恐怖を感じやすくなる。
  • 家庭の収入がかなり下がるために(28%〜42%の低下)、住居を変えざるを得なくなる。必然的に隣人関係も変わることになる。
  • 少なくともしばらくの間は学校の成績が下がり、学校での総合的な実績が下がる。
  • 長期的には身体的健康が弱くなり、寿命が短くなる。
  • 麻薬の濫用が増加し、喫煙も増加する。

 1993年の時点で、アメリカには離婚した片親と共に住んでいる子供が750万人いました。現在は810万人います(図12)。

図12

 図13は同棲に関するグラフです。アメリカでは20歳代の若い成人の同棲が激増しています。その傾向は健全な家庭で育った若い成人にも見られます。親が結婚する前に同棲していた場合には、そうでない時と比べて離婚する可能性は2倍になり、また最終的に結婚した相手とは別の人と同棲していた場合には、離婚する可能性は4倍になります。つまり、若者の同棲と離婚には強い関係性があるのです。もし皆様の中で同棲している方がいれば、注意して下さい。将来離婚する可能性は極めて高いということになります。

図13

家庭の構造と経済状態

 それでは収入、財産、貧困の問題へ移りましょう。アメリカでは貧困が子供に与える影響について活発な議論がなされています。莫大な数の公共政策は貧困を食い止めるためのものです。では、どこに貧困があるのでしょうか?もちろん父母の揃った家庭にも貧困家庭はあります。しかしそれは5.2%に過ぎません。父しかいない家庭ではそのうち13%が貧困状態です。母のみの家庭では31.6%となっています。このように、家庭の構造は貧困と非常に深い関係があります(図14)。

図14

 図15は家庭の類型別に見た子育て家庭における貧困の割合です。初婚家庭は10%となっています。継父(母)は9%です。継父(母)の家庭とは離婚した後、再婚した家庭です。初婚家庭より若干低い値であるのは、離婚後に再婚した時には、少し年齢が高くなっているからです。年齢が高いということは収入もそれだけ増えているので、わずかに貧困家庭が少ないのです。未亡人家庭の場合は39%が貧困状態にあります。同棲家庭は42%です。離婚・別居家庭は49%。常に片親の家庭は66%が貧困状態です。ここでも、家庭構造と貧困は極めて強い結びつきがあることが分かります。公共政策に携わる方々にとっては大きな問題でしょう。

図15

 次に収入について見てみましょう。アメリカでは収入も家庭構造と連結しています。最も高い収入を得ているのは初婚で一度も離婚していない健全な家庭で、平均48,000ドルです。継父(母)の家庭は若干低く45,900ドルです。同棲家庭では25,000ドル、離婚・別居の片親家庭では18,500ドル、常に片親の家庭は15,000ドルとなっています。家庭構造と収入に深い関係があることが分かります(図16)。

図16

 図17は家庭の財産に関するグラフです。51歳から61歳とありますから、生涯の労働と収入の後に貯えられた財産ということになります。それはどこにあるでしょうか。アメリカでは圧倒的に結婚している家庭が財産を所有しています。その平均財産は132,000ドルです。これには家の資産価値や貯蓄も含まれています。未亡人家庭は約42,000ドル、一度も結婚していない家庭は35,000ドル、離婚家庭は33,000ドル、別居家庭は7,600ドルです。独身者は図にありませんが、さらに低くなります。

図17

 図18は貧困率と婚外出産率を示しています。この図は1988年までですが、婚外出産率は最高33%まで上昇しています。1960年代に貧困率は下降していました。これはケネディー、ジョンソン時代ですが、社会福祉制度の大規模な拡大がありました。その時から今日に至るまで、アメリカは5.4兆ドルをかけて貧困との闘いに取り組んできました。ところが、社会福祉制度が取り入れられてから、この急激な貧困率の下降は、誰もが予想し期待したように継続するどころか、下降は止まり、そして上昇し始めました。社会福祉制度は貧困を減らすことができないのです。政府は何もすべきではないと言っているのではありません。しかし、その方法はうまく機能しなかったということです。

図18

 それでは別の問題に移りましょう。それは、日本ではまだそれほど大きな問題ではありませんが、アメリカでは深刻になっている問題です。図19は6歳以下の子供を抱えて働いている若い母親に関する図です。母親は働いているために子供を置いていかなければなりません。1950年には11%でした。1960年代から1980年代まで上昇して53%に達しました。1990年代初期には60%のアメリカの母親が幼い子供と離れて働いています。離婚した母親が外で働かなくてはならないのは理解できます。しかし増加しているのは結婚している母親たちです。この傾向は重要です。なぜなら幼い子供にとって母親が一緒にいなければ、その子供の愛情の能力を妨げる危険性が増大するためです。
 アマト(Amato)とブース(Booth)による最近の研究では、子供が生まれた後にフルタイムの仕事に戻った母親の子供は、子供と共に家に留まった母親の子供に比べて、1.6倍の割合で離婚しています。

図19

教育水準と家庭の構造との関連性

 それでは教育水準と家庭の構造がどのように関連しているかを見てみましょう。先ほど家庭の構造が貧困と収入と関連していると述べましたが、当然その根本に教育との関連があります。アメリカで高校を例に取ると、健全な家庭では7.33%の親が高校中退で、93%は高校を卒業しています。継父(母)家庭は若干低くなっています。同棲家庭の親は高い率を示しています。離婚・別居家庭はさらに高く、未婚の片親家庭の親は33%が高校中退なのです(図20)。

図20

 図21は教育水準から見た平均所得です。アメリカで高校を卒業していなければ、平均所得は1年で約15,000ドルです。高校卒業で22,000ドル、大学卒業は38,000ドル、大学院卒業は61,000ドルです。すでに日本でも知られているように、教育と所得は大きな関連があります。

図21

犯罪と虐待への影響

 アメリカでの家庭の構造と虐待の関係を見てみましょう。虐待は子供が将来犯罪者となる危険性を増大させます。伝統的な結婚をしている家庭では最も低くなっています。ところで、このデータはアメリカのデータではなくイギリスのデータです。このような資料をアメリカで入手することはほぼ不可能です。この分野は、研究が妨げられ、実施されていないうちの一つなのです。しかしカナダとイギリスのデータから、これらの発生率が一定であることを知っています。離婚・再婚家庭ではその6倍です。一般に、継父・母は子供に肉親同様の愛情を注ぐのが困難です。その結果間違った行為に走りやすいのです。未婚の母親家庭では14倍、父子家庭では20倍となっています。同棲家庭では同じく20倍です。実の両親でも結婚していなければ20倍ですから、結婚の有無が大きな違いを生んでいることが分かります。子供にとって最も危険なのは、母親が男友達と同棲している家庭で、33倍にのぼります(図22)。

図22

 図23では子供が虐待の結果死亡したケースを見ています。図22と同じ関係性と同じ順序が見られます。伝統的な家庭で最も危険度は低く、母親が男友達と同棲している場合はその73倍高くなります。

図23

 アメリカでは家族の崩壊にともなって虐待の割合が上昇しています。強く殴るなどの身体的な虐待は、1980年、1986年、1993年と増加しています。性的虐待は、1980年、1986年、1993年と急激に上昇しています。子供に対する感情的虐待とは、両親が互いを肉体的に虐待するのを子供が目撃した時に生じます。実際のところ、これは子供自身が身体的に虐待される以上に悪い影響を与えます。他と同じくらい急激な上昇ではありませんが、確実に増加しています(図24)。
 子供の時に受けた虐待は、彼らが引き起こす暴力犯罪と関連しています。あるアメリカの研究では、1986年に死刑を宣告された少年が14人いましたが、そのうち12人は子供の頃に身体的虐待を受けており、6名は性的虐待を受けていました。肉体的・性的虐待は子供を破壊してしまう可能性があるのです。

図24

 図25では犯罪と家庭の崩壊の関係を示しています。犯罪率と片親家庭の子供の割合との間に相関関係があることが分かります。

図25

 図26はアメリカの各州における片親家庭と少年犯罪の相関関係です。家庭が崩壊すればするほど、犯罪は増加します。崩壊家庭が10%増えるごとに、深刻な暴力犯罪、つまりレイプ、殺人、暴行などが17%上昇することが示されています(図26)。※7

図26

 図27はウィスコンシン州のデータです。このようなデータを司法システムの中から入手するのは極めて困難です。この研究によれば、投獄されている少年の割合は健全な家庭で最も低くなっています。両親が結婚していても別居している場合は4.8倍になります。離婚している場合は12.4倍、常に片親の家庭は22倍高くなります。このように少年犯罪と家庭の構造にも強い関連があるのです。

図27

結婚の破綻が地域社会の崩壊に与える影響

 一つの地域社会において片親家庭の占める割合が約30%に達すると、その地域社会は崩壊し始め、子供たちの成長にとって助けとなる状態から危険となる状態に転じます。そして、その地域社会における犯罪の発生率が急激に上昇し始めるのです。ですから日本でも婚外出生率や離婚が増えると、地域社会の崩壊を予期すべきです。それは必ず訪れるのです。
 都市の中心部の貧しい人々が住む地域では、両親のそろった家庭が事実上消滅したことによって、その地域の崩壊を招いたのです。
 ところで、アメリカの黒人の犯罪率が極めて高いということを皆様もお聞きになったことがあるかも知れません。しかし研究資料を見ると、犯罪と投獄の比率は白人と黒人の間で同じことが分かります。結婚している黒人家庭の子供の犯罪率は、結婚している白人家庭の子供の犯罪率と同じくらい低いのです。そして離婚し崩壊した白人家庭の子供の犯罪率は、崩壊した黒人家庭の子供のそれと同様に高くなります。アメリカの黒人家庭はひどい崩壊状態にあります。黒人の子供の69%は婚外出産による子供たちです。つまり10人のうち7人が婚外で生まれたのです。それが貧困、犯罪などに与える影響は甚大です。
 私の知る限りでは、家庭崩壊による損失の見積もりを行った研究はありません。これから数年かけて、われわれはヘリテージ財団でこの損失を見積もる作業に取り組んで行くつもりです。私は実際これらの損失は膨大なものであるとの確信を持っています。そして家庭崩壊がもたらした結果を改善するために計画された公共プログラムを支援するために使われる税金の大部分は健全な家庭によって払われたものであり、一方、そのようにして生み出された税金を最も多く消費しているのが崩壊した家庭である、ということを発見できるだろうと予想しています。

宗教的礼拝の効果

 それでは関連する分野へと移りましょう。宗教とその効果についてですが、それは家庭と関係があるからです。社会学的なデータを見る社会科学者が誰しも驚くパターンの一つは、定期的に神を礼拝する習慣が、家庭の崩壊とは正反対の結果をもたらすという明白な事実があるということです。
 宗教的礼拝のもたらす恩恵について私の書いた論文がインターネット(www.heritage.org)で入手できます。以下はその要点です。

  • 家庭の結びつきの強さは宗教の実践と切り離すことができない関係にある。教会に行く人々は結婚する率が高く、離婚したり独身であったりする率が低く、また結婚の満足度において高いレベルを示す率が高い。
    横道にそれますが、アメリカにおいてティーンエージャーが知らないある事実があります。アメリカの調査では、誰が最も性交渉を楽しんでいるかご存知ですか?また誰が最も頻繁にその機会を持っているでしょうか。「プレイボーイ」ですか。違います。シカゴ大学の研究によると、アメリカでは、性的オルガスムを最も楽しんでいるのは、福音主義プロテスタントで、毎週教会に通っている女性です。女性の皆様には申し訳ありませんが、これは重要なデータです。また最も頻繁に性交渉の機会を持っているのは、毎週教会に通うカトリックの女性です。
  • 教会への出席は、結婚の安定と幸福度を占う最も重要な項目である。
    私たちが見てきたアメリカの健全な家庭のほとんどは、毎週教会へ通う人々です。全てではありませんが、圧倒的多数がそうです。
  • 宗教の定期的な実践は貧しい人々が貧困から抜け出すために役立つ。
    ハーバード大学が行ったフィラデルフィアに対する研究によると、都市部の貧困層の子供の中でその後中流階級へ加わることができたのは、片親家庭の出身者であっても毎週教会に通っていた子供でした。
  • 宗教的信仰と実践は、個人の道徳基準と健全な道徳的判断力の形成に実質的に貢献する。
  • 定期的な宗教の実践は、自殺、薬物濫用、婚外出産、犯罪、離婚など多くの社会問題に対する予防効果を個人に一般的に植えつける。
    宗教の実践はこれらの問題に対して最大の防御となる方策なのです。ですから政治家にとって、たとえ彼が神を信じなくとも、人々のためにはこれが必要となるということです。
  • 定期的な宗教の実践は、うつ病(現代の流行病)を低減させ、自尊心を高め、家庭および結婚における幸福を増すなど、強力な精神衛生上の効果がある。
  • アルコール中毒、薬物濫用、結婚の崩壊によるダメージの回復において、宗教的信仰と実践は強化と回復の主たる源泉となる。
  • 定期的な宗教の実践は個人の肉体的健康にとって良い。すなわち長寿や、病気からの回復を可能とし、多くの致命的な病気にかかりにくくする。

 それでは次に進みます。図28はアメリカにおける16歳の性体験率と、同世代の仲間および礼拝との関係性を示しています。ご覧のように近似曲線が安定しているので、明確な相互関係があるということです。もし16歳の少年が全く礼拝に行かず、そして性体験のある友人がいる場合、彼が性体験を持つ確率は96%です。逆に、同じ年齢でも、毎週教会へ通い、友人も性体験がなければ、性体験を持つ確率は3%です。友達がどのような行動をとっているか、また自分がどのくらい礼拝に通うかに応じて、性体験を持つ割合が変化するという関係があるのです(図28)。

図28

 図29は毎週の礼拝ではなく、過去4週間にどれだけ両親が礼拝へ行ったかによるものです。もし両親が全く教会へ通わない場合では、アメリカの12歳から17歳の子供のうち61%は性体験を持たずにいます。その割合は12歳では高く、17歳では低くなりますが、この図はそれを合わせたものです。また、母親のみが教会へ通う場合では、より多くの子供が性体験を持たずにいます。父親のみが教会へ通う場合、さらに多くなります。もし両親とも教会へ行けば、性体験を持たない率は最高になります。

図29

宗教に関するデータと公共政策との関係

アメリカに関して私が以下のように書いたことは、すべての国に当てはまることことです。

 「宗教的信仰の広範な実践は、アメリカの最も偉大な国家資源の一つである。それは個人、家庭、地域社会、そして社会全体を強め、恩恵をもたらす。本質的な宗教の実践が広がれば広がるほど、それは家庭の強化、教育や職業の向上、そして婚外出産、麻薬およびアルコール中毒、犯罪や非行など主要な社会問題に対して新しい世代を予防する上で、有益な効果をもたらすであろう。例えば、国民の生活の中で、アメリカの未来の行程を導く者たちが最も多くの関心を持つべきものは家庭の健全さということである。そしてデータが示すように、家庭と結婚の健全さでさえ、宗教的信仰の実践と強力に結び付いているのである。
 宗教の広範な実践を促すのは良い社会政策である。それを妨げるのは悪い社会政策である。宗教の実践は、憲法が保証するすべての市民の自由に対して何らかの危険をもたらすものではない。宗教実践の消失こそが危険をもたらすであろう。」

 政府は神と同様に振る舞うべきです。すなわち、人間に神を信じるか否かの選択の自由を与えるのです。しかし、教育や国民の生活から宗教を排除することは、道理にも人間性にも反します。他の事柄と同じく、人間には選択の自由がありますが、その選択の結果までは選ぶことができません。
 家庭の崩壊が及ぼす影響に関するデータは、国家としての我が国の強さがどこにあるのかを明らかにしています。アメリカの健全な結婚は頻繁な宗教的礼拝と密接な関係があります。皆様もこの二つの関連性を理解されたと思います。また同様に、性感染症に対しても宗教が果たす防御的役割は大きいのです。

性行為を自己中心的にした避妊

 それではここで少々過激とも言える考え方をご紹介しましょう。多くの人々は受け入れがたいと感ずるかも知れませんが、心してお聞き下さい。1997年、データに基づいて初めてこの考えを発表した時、保守的な人たちでさえ合意しがたい様子でした。アメリカのほとんどの保守層は今でもそうなのですが、その内容を否定することはできないようです。
 日系アメリカ人で、最も著名な社会学者の一人にフランシス・フクヤマという学者がいます。とても良く知られており、国際的にも多くの著作があります。彼は「大崩壊(The Great Disruption)」という新しい本を出版する予定です。彼は数多くの国際的なデータを分析し、なぜ1960年代に世界中で社会崩壊が始まったのかを研究しました。背後にあったその原因とは何でしょうか。彼が突き止めた原因を聞いて私は嬉しく思いました。全く私と同じ考えだったからです。皆様も彼の本を6月になれば読むことができますが、私から今その内容をお話します。
 これまで見てきた図から、婚外で生まれた子供はそうでない子供よりも弱いということが分かりました。過去60年間、性交渉はますます結婚の外部に押し出されました。そのような性交渉を可能にしたのは何だったのでしょうか。それは、避妊の技術とその技術の使用だったのです。
 それでは、私の最も深い洞察をご紹介します。
 避妊の実践は人間への歯止めをなくしました。性行為は、生命を受け入れる限り、最低、男性を「他者」(生まれてくる赤ん坊)へと向かわせる効果があります。そうでなければ、人間は次第にその行為を完全に自己中心的なものへと変質させていきます。元来、性行為は自己中心的な性質を含んでいますが、避妊によって完全に自己中心的なものとなるのです。さらには同様の現象が徐々に女性にも起こります。そして、すべての行為の中で最も快楽を伴なう行為が、他者中心から自己中心へと変化します。性行為は他者中心から自己中心へと変わり、そのすべての社会的結果をもたらすのです。
 避妊は男女の関係を根本的に変えました。社会の秩序を徐々に変え、家庭の結びつきを解いてしまったのです。ひとたび性行為から「子供」を切り離したとき、われわれは「結婚関係」を「性行為の関係」に変えてしまいました。このことは当然、「性行為の関係」が「結婚」に変化することを誘発したのでした。
 「援助交際」は、これが発展した日本的変形と見ることができるでしょう。

共同創造行為としての性行為

 さて、虐待、犯罪、婚外出産などによって変えられてしまった人々の最も機能不全な部分はさておいて、その生活が社会の望む範囲の中に留まっている人々に目を向けてみましょう(図7)。西ヨーロッパは、かつてないほどに豊かな時代にありますが、急激に異なった社会への道を歩みつつあります。今から50年後には、地中海諸国の子供たちには兄弟や姉妹、伯父や伯母、そしていとこがいなくなるでしょう。日本も出生率が少しずつ低下していますから、同様でしょう。社会を束ねる接着剤の役割を果たすのはもはや家庭ではなく、職場と国家となるでしょう。それは現在と根本的に異なる社会です。スウェーデンでは今日、大家族を持つ自由がありません。私の家庭のように大家族である者はスウェーデンに住むことができません。そこでは事実上二人以上の子供を持つことが不可能です。それは国家・職場・税金・教育の制度の故に、経済的に不可能なのです。
 面白いことに、低下しつつある出生率を上向きに転じた国は一つもありません。出生率は変わらず低下しています。日本も来年は今年の水準を下回ることでしょう。スペインは昨年1.27でしたが、今年は1.15です。
 それでは性行為、結婚、宗教などの問題の要点をまとめましょう。
 理性が知り得る限りにおいて神の最高の創造行為は、人間の創造です。性行為において創造主は人間を自己の「共同創造者」※8とします。そして人間も神も共に、人間の最高の自然的創造行為であると同時に神の最も偉大な創造の行為、もう一人の人間を永遠に存在せしめるという行為に参加するのです。正統ユダヤ教の伝統においては、性行為は旧約聖書に出てくるエルサレムの神殿の至聖所に入り、神が最も特別に臨在される契約の箱において神と出会う行為と同じものとして、賞賛せずにいられないように描かれています。※9
 断固として避妊を行う結婚した人が神を礼拝するために神殿に行けば、その人は事実上、「私はあなたを私の創造主として礼拝しますが、私は最高の行為、すなわちあなたが永遠に存在せしめようと望まれる次の人間を創造する仕事をなすために、共同創造者として共に働くことはお断りします」と言うことになるため、根本的な矛盾が神の前に立つその人の姿勢の中に忍び込んでくるのです。
 この矛盾は深刻なものであり、その結果もまた、データが示しているように個人としての人間にとっても社会にとっても深刻なものです。これを正すには次の二つの原則が共に保たれなければなりません。
①性行為の根本的目的は、一人一人の子供に託される次の世代の人類の種の保存と継続である。
②性行為は男女を一つに結びつけ、最高の喜びをもたらす、ということです。
 子供はその潜在的な可能性を最大限に引き出すために、結婚している父親と母親の愛情を必要とします。この結婚による愛の自然で有機的な統一性は、子供に向けられ、性行為の中に完全性を持って存在しますが、私はそれが全ての鍵だと考えます。そしてその崩壊は男女と親子の断絶につながります。現在何が起こっているでしょうか。アメリカは混乱し、混沌とした社会となっていることを私たちは見てきました。ヨーロッパは徐々に死滅の方向へ向かっており、人口統計学的に見て崩壊しつつあります。

純潔を選択するアメリカの10代

 いくつかの良いニュースをお知らせして結論に向かいましょう。アメリカのティーンエージャーたちは変わりつつあります。若者たちの婚外出産率は下がっています。大人たちの間では今なお上がり続けていますが。ティーンエージャーたちの中絶は減少しています。純潔であるティーンエージャーは増加しています。ここ2〜3年間で、250万人のアメリカのティーンエージャーが結婚まで純潔を守ることを誓っています。日本でも同様の運動が始まるよう期待します。
 すべての国はこのことに関して互いに助け合うことができます。なぜなら、愛、性、家庭、および宗教的礼拝に関する人間の性質は、同じく基本的なものを必要とし、人生のこうした面における善に対しては同じ基本的な反応をするものだからです。日本の家庭の強さが、子供たちの強さと共に保持され、回復されるように、又、皆様の国の教訓がアメリカの家庭を強めるように、そしてまたアメリカからの教訓が皆様の決意を強めることになりますように念願します。
 ご静聴、有難うございました。

参考文献

  1. パトリック・F・フェイガン、『増大する私生:アメリカの社会的破局』ヘリテージ財団F.Y.I.No.19/94、1994年6月29日
  2. 厚生省家庭局、AFDC(扶養児童世帯補助)フラッシュ・レポート、1995年9月
  3. パトリック・F・フェイガン、『児童虐待の危機:結婚、家庭、アメリカ地域社会の崩壊』(ヘリテージ財団、Backgrounder No.1115、1997年6月3日)9〜10頁
  4. デビッド・B・ラーソン、ジェイムス・P・スウェイヤーズ、スーザン・S・ラーソン『高くつく離婚の結果:アメリカにおける離婚の臨床的、経済的、および公衆衛生上の影響を評価する』(国立健康管理調査研究所、ロックビル、メリーランド州、1995)に掲載されている最近の離婚に関する文献の概観から要約したもの。
  5. ビッド・B・ラーソン、ジェイムス・P・スウェイヤーズ、スーザン・S・ラーソン『高くつく離婚の結果:アメリカにおける離婚の臨床的、経済的、および公衆衛生上の影響を評価する』(国立健康管理調査研究所、ロックビル、メリーランド州、1995)43〜49頁
  6. 同書 58〜59頁
  7. パトリック・F・フェイガン『暴力犯罪の根本原因:結婚、家庭、地域社会の崩壊』(ヘリテージ財団 Backgrounder No. 1026、1995年3月17日)9〜10頁
  8. この言葉はここでは比喩的に用いられている。
  9. ジェフリー・サティノバー(Jeffrey Satinover)を参照。