PLA-Japan岐阜シンポジウム 記念講演 全国の活動

PLA-Japan岐阜シンポジウム 記念講演 (2002年5月26日)

『性感染症と性欲の昇華』

講師:三鴨 廣繁 先生(岐阜大学医学部医師)


性感染症発生の歴史的遠因

 私は、PLAとその活動については、昨年まで知りませんでしたが、個人的にはPLAのような運動が重要だと思っています。私は、研究者としては、感染症学、化学療法学を専門としています。臨床では、産科婦人科が専門ですが、この“婦人”という呼び方が女性差別にあたる可能性があるということで、一般的に、今後は「産婦人科」という呼称は「女性科」などの呼称に変わっていくと思います。

 私は、昨年県下の高校で10数校、今年も現在までに3校で「性感染症」の講話をしてきました。今の高校では、教員の先生方が性教育に戸惑っていますし、マスコミの性情報が氾濫する中で、岐阜県のような地方では「寝た子を起こすな」という考え方があります。私自身もそういった考えに同感する所もありますが、今、性感染症の正しい知識を身に付けてもらわないと、日本の存亡に関わると思い、悩みながらも高等学校での性講話を引き受けています。

 ところで、「性病」と「性感染症」の違いがお分かりになる方はいらっしゃいますでしょうか。実は、「性病」という言葉は、今は死語になっています。その理由は2つあります。1999年に、それまでの「性病予防法」「エイズ予防法」を他の感染症に関する法律とまとめて、新しい感染症に関する法律が制定されましたが、その新しい法律の中では、「性病」という言葉は使用されず、「性感染症」という言葉が使用されています。また、もう一つの理由は、「病気」ならば入院して治療するというような認識をお持ちの方が多いと思いますが、現代の「性感染症」は、罹患しても症状が出ないことが多く、「病気」というより「感染症」と呼ぶ方が適切であるという考えが浸透したためであると考えられます。

 それでは、「性感染症」はいつ頃から存在しているのでしょうか。実は、「性感染症」の歴史は、大航海時代にさかのぼります。アメリカ大陸を発見したとされているコロンブスが、1493年に、カリブ海の西インド諸島のハイチ諸島に船員達と滞在して、彼らが「梅毒」に罹患し、それをヨーロッパに持ち帰り、やがてスペインで大流行し、それがヨーロッパに広がったと言われています。当時は、その病気の原因は不明でしたが、やがて性行為に関係があるとわかり、病気に罹患した人達の性行為を禁止することで収束していったと言われています。ヨーロッパで流行した梅毒は、バスコ・ダ・ガマの一行が南アフリカ経由でインドにもたらし、やがて日本にもたらされたのであろうと考えられています。もし、当時にPLAのような活動があったら、性感染症の蔓延は防げたであろうと推察されます。

人類の存亡を左右する性感染症

 性感染症が怖いのは、エイズを考えていただければご理解いただけると思いますが、性感染症の蔓延が、人類の存亡に関係することです。私の所にも、高校生が性感染症の検査などで診察に来ますが、「クラミジア陽性」と伝えると「エイズでないからセーフ」と間違った考え方をする学生達がいます。しかしながら、実際にはクラミジアは「アウト」であります。現在、行政側はエイズ中心に警戒を訴えていますが、今世界で一番増えているのはクラミジア感染症であり、厚生労働省の調査でも、産婦人科を受診した20歳未満の女性の5人に1人はクラミジア感染症に罹患していることが判明しています。

 クラミジア感染症に罹患すると、「不妊症」になりやすくなります。クラミジア感染により、卵管が狭窄・閉塞したりして、妊娠ができなくなったり、子宮外妊娠になったりすることがあります。男性も精子形成能が阻害されたりすることもあります。

 複数の性的パートナーを持つと性感染症に罹患する確率は高くなります。また、クラミジアや他の細菌などの感染症によって「早産」も起こっており、「未熟児」が生まれることもあります。また、かつては、妊娠中の性交渉は夫婦間でもなかったのですが、妊娠中の性交渉により早産を引き起こす可能性が高まるという学説もあります。

 性交渉の最終目標は子孫を残すことであるはずですので、私は、高校生達に「その時の感情に流されるセックスはいけない」「女子学生は、性欲をかきたてるような服装をさけるなど、服装も気を付けるべきである」、「自分の体は自分で守りなさい」などと講演してきました。

 また、望まれない妊娠に対する中絶手術は人間の体にとって有害なものであり、中絶手術により子宮が癒着して不妊症になることもあります。普通の手術は目で見て行われますが、唯一、中絶手術だけはいわゆる“山勘”で実施されており、子宮が傷ついたり、穴があいたりすることもあります。

 PLAのように家庭を大切にしようとするのは非常に重要な理念であると思います。結婚しない人達もいますが、家庭の重要さを否定する人間はいないのではないでしょうか。また、不登校の学生が増えていると聞きますが、家庭にも原因の一つがあると思います。性には、光の部分と影の部分がありますが、皆さんたちの「Pure Love」の性は光の部分であり、性感染症は影の部分であることを理解していただく必要があります。

Pure Love 運動は誇りと価値あるもの

 さて、最後に性欲の昇華についてですが、私は、性教育は小学生では、夢精や月経程度で、中学生は妊娠のメカニズムや生命の尊さを教える程度で、小学校および中学校では、具体的な性行為などについて、学校の先生が話す必要はないと思っています。避妊については、本来、家庭で責任を持って教育していただくのが本来の姿のような気がしています。

 また、スポーツや音楽などは性欲の方向転換、すなわち昇華になると思います。私が講演に伺ったある高校では、「人の話をしっかり聞くことができる」、「挨拶がきちんとできる」ことを、部活動などを通して教育し、大成功をおさめている素晴らしい高校がありました。これなどは教育上、昇華が成功している例と言えるのではないでしょうか。高校時代には、誘惑も多く、教育者や家庭が、部活動などを通して、誘惑や有害情報から学生を保護するといった行動をとることも重要であると思います。特に、あふれるマスコミの情報も選ぶことを教えるべきであるうえに、PTAやPLAのような団体がマスコミに意見を言うことも重要な責務であると思います。

 最後に一言。皆さん達のような運動は、価値ある運動であることを誇りにしていただきたいと思います。

(編集・PLA-Japan岐阜)


講師紹介

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三鴨 廣繁 (みかも・ひろしげ)

昭和36年3月8日生

昭和58年3月 名古屋大学文学部卒業

平成元年3月 岐阜大学医学部卒業

平成12年10月1日〜 岐阜大学医学部附属病院産科婦人科病棟医長

平成14年4月1日〜 岐阜大学医学部臓器病態学女性生殖器学(講座再編により呼称変更)

勤務先:岐阜大学医学部臓器病態学女性生殖器学

専門領域:臨床微生物学、抗菌化学療法学、感染症学、産科・婦人科、東洋医学、スポーツ医学


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